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  • 執筆者の写真medicaproject 医療福祉ライター今村美

あやめ十八番『ゲイシャパラソル』@座・高円寺

ついに観られた、あやめ十八番。以前から気になる才能、堀越涼さんの作品。『ゲイシャパラソル』@座・高円寺。

一度目の大学院時代の後輩、というよりも真っ黒くろけのあの時代をともにサバイブした戦友?!蓮見のりこさん出演。大学院の自主ゼミが今日はお休みで、仕事の打ち合わせの時間と夜の授業の間にぽっこりちょうど時間が空いたことで実現した久々の観劇。この数年ずーっと「次回公演こそは観に行くね」と言いながら「観に行く詐欺」となっていたのり子さんの舞台にやっと来られた~。 以前から気になっていた堀越涼さんの脚本・演出の作品がやっと観られた!! そして十数年来か?!の座・高円寺。

ぶっちゃけ友人知人の出ている舞台を観に行くというのはひじょーに恐ろしい。終わったら楽屋へ来てねとか言われているときはなおさら。だって、面白くなかったのに面白いとか言えないんだもーん!

が、そんな心配は杞憂に終わった。というか無縁。いやー、いい芝居観たー!こんないい芝居に出演なんて、エライぞ、のり子!(←なにさま・・・?)

エンタテイメントなパッケージなのに、結構社会派。平成60年、未来の深川芸者のお話なんだけれども、いまの日本の抱えている不安はしっかり反映されている。

最後は恋愛ものの小さな物語に収斂されていくという見方もできるだろうけれど、深川一の芸者である仇吉が仇吉としてでなく、恋する男が名付けてくれた「あきなかつぼみ」としての人生を選択した、つまり、誰かの欲望ではなく、自分自身の純粋な欲望にしたがって、自分の本当に望む人生を取り戻したということには深読みをしたくなる。誰かが欲望する人生を欲望して生きがちな現代の私たちが、私たちの手に、自身が本当に望む価値に基づく、自分の人生を取り戻すという意味で、やっぱり決して小さな物語が描かれているわけではないのかもしれない、と思う。

深川一の芸者役の金子侑加さん始め、日色大輔役の小林大輔さん、羅義天役の吉川純広さん他、なにやら色気のある役者さん多数。

金子さんの深川一の気高い芸者である仇吉っぷりと、愛する男の前で初なあきなかつぼみっぷりとの演じ分けは、個人的にはツーンとした仇吉のほうが好みだけれども(笑)、さすが看板女優の凄み。

同じく深川芸者で、太鼓持ちの喜助に恋心を抱かれ、自身も惹かれつつも、お金のためにお客さんを取る(身体を売る)染太郎役の今泉舞さんの初々しさ故に、こちらに訴えかけてくる哀しさと切なさときたら。

羅義天役の吉川純広さんの大企業のトップとしてのしたたかさとやんちゃっぷり、色気あるわ~。仇吉だって、ちょっと惹かれちゃうよね。

野良猫リージュ役の服部容子さんは、野良猫役ってこともあるけど動きやダンスシーンがやはり印象的。人間社会で起きていることを「猫」というひいた視点から切り込む、とても大事な立ち位置。

難しいこと抜きに純粋にエンタテイメントとして楽しい。

でも、何度も観たくなるし、観れば観るほどいろんな見方が出てきそうな、深読みをしたくなる作品。

要は、よい作品ということ。

戦友のりこさんは、深川一の芸者を愛人にする夫を持つ元芸者とか、そういう役回りが似合い過ぎる(笑)洋服で出てきたときは、えー着物の芸者じゃないの~と思いきや、途中は着物。手をついてお辞儀するときの所作が美しくて、へぇっとちょっとドキドキしたりして。そして、元芸者って…。日色大輔(夫で、仇吉を愛人にする政治家)、悪いやっちゃの~。ちなみに、日色大輔役の小林大輔さん、いかにも地元有力政治家一家のぼっちゃんの体(って、これ誰かを想起させるな…)、高圧的な中にもにじむ色気がなんとも説得力がありました、ハイ。

あー、やっぱり芝居は楽しい~。かつてのように年間200本とは言わないから、50本くらいは観られるようになりたい!『ゲイシャパラソル』、17日(日)までやってます。気になる方は足を運んで損なし。

帰りは新高円寺まで歩く道すがら、これまた久々の高円寺を堪能。ちっこい個人商店が多数並ぶごちゃごちゃ感。やっぱり好きだ、中央線沿いのこの感じ!

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