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  • 執筆者の写真medicaproject 医療福祉ライター今村美

かかりつけ薬剤師とお薬手帳

緩和ケア研究会の定例会は、河口湖にある赤池薬局の赤池さんにお話をいただく。

薬剤師さん、注目している職種のひとつですが、やはりおもしろかった!

まず、平成28年から「かかりつけ薬局」という文言が「かかりつけ薬剤師」という表現に代わり、「かかりつけ薬剤師」という制度ができていること、皆さんご存知でしたか~? かかりつけ薬剤師を持つと、「かかりつけ薬剤師指導料」というものが発生する一方、新しく飲み合わせや副作用といった問題があった場合に、通常発生する費用がかからずにサポートが受けられます。 なんといっても同一の薬剤師さんがひとりのご利用者さんの薬状況をすべて把握することで、薬が効いているのかいないのか、薬の副作用は出ていないか、飲み忘れや飲み残しはないか、そもそも飲める形態のお薬なのか、複数の薬局から重複する内容の薬が出ていないかといった、薬が及ぼしているかもしれない悪影響にいち早く気づき、より適切に薬と付き合ってよりよく生きるサポートをしてもらえる。このメリットは結構大きい。

日本の高齢者のポリファーマシー(多剤併用で、不適切な薬剤処方により身体に悪影響を及ぼす)問題は深刻で、中央社会保険医療協議会(2015年)では、2つ以上の慢性疾患を抱える高齢者では平均約6剤、認知症の高齢者で約6剤以上の多剤処方、複数の医療機関から10種類以上の薬の処方を受ける高齢者も一定割合存在していることが指摘されていたけれども、10種類以上って、ねぇ?!(ちなみにポリファーマシー問題、もともとは精神科医療方面から…)

さて、かかりつけ薬剤師がいれば、多剤処方なんてことはなくなるはず。と思いきや、「田舎だと、皆さん遠慮されて、ほかの薬局で薬をもらっていていても’もらっていない’’(ほかに薬は)飲んでいない’と答えられる方も少なくないんです。ほかの薬局でもらっていてもかまわないんですよ、本当のことを教えてください、と」という経緯から、重複するお薬が処方されてしまうケースもあるよう。みなさん、自分の身体のためにも、本当のことを言いましょう。 また、在宅でがんの家族を看取ったメンバーからの「亡くなる直前、医療用モルヒネがどの薬局を探してもないという状況があった」という発言に対しては、「一オーナーとしては正直あまり持ちたくない。非常に高額な上に、期限が切れて破棄する際にも保健所の立ち合いが必要となる。必要な患者さんがいればもちろんおくけれど、常時置いておくのは難しい」との答えも。

これらの受け答えからも「真摯に患者さんと向き合っている薬剤師さんだな」ということ垣間見える赤池さん。一押しされていたのがお薬手帳!

1、複数のお薬手帳は止めて、1冊にまとめて必ず医療機関に持参。

→複数持っていると状況が把握できない~!

2、言いたいことや伝えたいことを書いておく。

→たとえば「最近味覚がおかしい。家族に料理がしょっぱくなったと言われる」なんてときにも要注意。唾液の分泌を抑える薬も少なくなく、口が渇くことでそうした症状につながっていることも。なんとなくだるい、便秘・・・気になったことは書き留めておこう!

3、一般用医薬品・健康食品も書いておく。

→たとえば、飲み合わせNGとしてよく知られる納豆と血液をサラサラにするお薬。実はクロレラもNG!ほかによく知られるNGの組み合わせにグレープフルーツと血圧の薬もありますね~。 いずれも血液サラサラにする薬全般、血圧の薬全般ではなく、それらの薬の一部であるというところがまたヤヤコシイ! ちなみに、みかんやレモンの柑橘類すべてNGと勘違いされがちですが、NGなのはグレープフルーツのみ。 お薬手帳に書いておけば、薬剤師さんの気づきと適切な服薬指導にもつながって安心♪

4、いつも携帯、いつも同じ場所へ保管。

→外出時の体調不良に備えていつでも携帯、いざという時家族にもわかるように保管場所を決めておくのもgood!

最近は救急隊員の方からお薬手帳の提示を求められることも。

5、災害時には必ず活用。

→連続記録のあるお薬手帳を持っていれば、大規模災害時には処方箋がなくとも薬がもらえる可能性が!「連続した記録」というところがポイント!(患者さんの中には「毎回同じ薬で同じシールだから貼らなくてもいいだろう」という方もいらっしゃるようですが、「同じ薬で安定している」と見ることができることから、お薬手帳で薬がもらえるという流れもあるため、シールはちゃんと貼ることが大事!) お薬手帳があれば、災害時に一人ひとりに「錠剤か飲み薬か」「どんな色か」etcと詳しい問診をすることなく病状やお薬を把握することができ、時間の短縮に。大規模災害ではお薬手帳の活用が大きなメリットに。

と、お薬手帳、なかなかに使えるやつです。

今回はあまり触れられませんでしたが、「健康サポート窓口」としての薬局の役割についても少し話題に挙がっていて、地域包括ケアの中で重点化されている予防、在宅、看取り・・・と、薬局・薬剤師の今後の活躍に期待。

それにしても!地元にこんな素敵な薬剤師さんがいたとは!まだまだ在宅の進んでいないこの地域では在宅関連の案件はそう多くはないようですが、なんともったいないお話。こんな素敵な医療資源をもっと在宅に生かさない手はない~!

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