file001 NPO法人にしはらたんぽぽハウス
にしはらたんぽぽハウスは、主に障がいを持つ人たちのための就労支援を行うNPO法人である。
たんぽぽハウスには毎日いろんな人が訪れる。
なぜなら、誰でも利用できるお手頃ランチを提供しているから。
これがまた本当においしい。
食には結構うるさい母が「天神のど真ん中でもやっていける味」(都会の激戦区でも通用する味)と太鼓判を押していたほど。
金曜は、西原村役場のすぐ隣の、もとからある「たんぽぽハウス」ではなくて、熊本地震後に新しく建設された「ふわり」でラーメンデ―。
「ふわり」はへんぴなところにある。でも、作業服を着た職人さんらしき人たちやらスーツ着た会社員やら、小さな子連れのお母さんたちグループやら、いろんな人がランチにやってくる。時には室内に入りきらず、デッキはおろか、テントを張った臨時のテーブルにまで人がいっぱいになる。
土曜は、子ども食堂の日。
西原村は熊本地震で被害の大きかった地域の一つで、たんぽぽハウス自体も大いに被害を受けた。
にもかかわらず、地震の後すぐに炊き出しを始めた。
「引きこもりの人たちを連れ出すなら、家から出ざるをえなくなった、いまがチャンス」と語っていた施設長・上村加代子さんの地震から間もない頃の言葉をくっきりと覚えている。
いまもたんぽぽハウスでは仮設住宅に食事を届けたり、移動式居酒屋を開催したり、「おいしいもの」を届けている。「おいしいもの」は人をしあわせにする。そして、加代子さんをますますまるくする。 「ふわり」でラーメンを食べた後、ついつい「たんぽぽハウスはいったい何屋さんですか?」と尋ねると、加代子さんは「障がい者の就労支援のはずばってん、もう何屋さんかわからんとよ~」とカラリと笑う。 目の前に困っている人あれば、放ってほけないのが、たんぽぽハウスで、加代子さん。
生活に困窮した身寄りのないお年寄りがいれば、敷地内に小屋をつくって住んでもらう。
アルコール中毒の人がいれば、生活を整えて、「もうずっとお酒は飲んどらん(飲んでいない)」という状況に持っていく。 ちなみに、たんぽぽハウスでつくっている商品はどれもおいしいけれど、イチオシは『ねぎ味噌ラー油』。 加代子さんが出会った当時、周囲が「クスリでもしようらすとじゃなかやか」と疑うほど、目はうつろ、震えが止まらずにいた青年が一から十までひとりで手がけている商品だ。この商品と出会って、役割ができて、青年の瞳はきらきら輝くようになった。
でも。障がいを持つ人がつくっているからサポートしようと商品を買うわけじゃない。ラーメンを食べにくるわけじゃない。おいしいから、買う。おいしいから、やってくる。 少なくとも私は。毎回帰福の際には、ついたんぽぽハウスを訪れてしまうけれど、それは単においしいものが食べたいのと、加代子さんがまんまるくなっていく姿を確かめたいからに相違ない。