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  • 執筆者の写真medicaproject 医療福祉ライター今村美

腹膜がんと叔母と緩和ケア

腹膜がんを告知されてから2年半。叔母が逝ってしまった。

お正月に私たち家族は帰省しなかったけれど、今年は親族の集まりに叔母も顔を出していて(低空飛行ながらも安定していて)元気やったと母から聞いて安心していた矢先の訃報。 急に痛みを訴えて病院へ駆け込んだのが5日の日曜日。そのまま入院し、7日に系列のホスピス緩和ケア病院へ転院してから1日ちょっと。あっという間、だけれど家族にとっては長い長い4日間だったと思う。この間、2人の息子たち(私にとっては従兄弟)と叔父が交代で24時間叔母に付き添い、小さな子どもを2人抱える従妹も車で1時間の自宅から何度も往復し、わが父母含め親族たちもできる限り叔母の側に寄り添った。

叔母を見送って改めて感じたのは、ホスピス緩和ケア(病院)=最期の場所という認識の根強さ。結果的に叔母がホスピス緩和ケア病院にお世話になったのは2日間。主治医から「長くいる人もいれば、そこから戻ってくる人もいる。決して最期のためだけの場所ではない」と勧められても頑なに拒み、主治医の説得や実際に見学に行く中でようやく'緩和ケアとはどんなものか'という認識を改め、「次の抗がん剤治療を受けたらお世話になろうと思う」と話していたという。ちなみに、最期まで「死にたくない」と生きる希望を強く抱いていた叔母は、最後の最後まで抗がん剤治療を望んでいた。

叔母に限らず、叔母を緩和ケア病院に見舞った妹が耳にした、入院中の患者さんが病院内を歩いているのを見て、ほかのお見舞いの方が発した「一人で歩きよってん人もおらっしゃるとね」の言葉からも緩和ケア病院がどんなふうに認識されているのかがよくわかる。同じくがんで逝ってしまった幼なじみのお父さんもホスピス緩和ケア病院を勧められた時、「あそこにはいかん」とやはり頑なに拒んでいたというから、地域の人たちの緩和ケア病院への認識が伺える。

がんの痛みは適切にコントロールされるべきものだし、最期だけでなく初期から緩和ケア医療が適切になされるべきという認識が一般に普及してきていると思っていただけに、あぁまだまだなんだなぁと私自身も再認識。

それにしても。「闘病」という言葉には違和感があったけれど、叔母の2年半を振り返ると、穏やかな時間も楽しい時間もたくさんあったには違いないけれど、やっぱり「闘病」という言葉を当てはめてくなってしまう。特に最期の4日間はがんという病気の手強さをガツンと見せつけられた感がある。

お骨になった叔母を見て、「あぁ、本当に闘っていたんだな」と、ピンピンコロリで88歳で他界した祖母の「20歳」と言われた遺骨を思い出した。従妹が「もう苦しまんでよかごつ(腹膜周辺の)骨はいれんやった」というのに、ハッと息をのんだ。

生きたいと願う人の前でいったいなにができるだろう?

心配りや言葉がけの絶妙さや、ピンクのセーターや白いミニスカートが似合う可愛らしさ。皆のアイドル的存在だった叔母の通夜葬儀には750名もの方々が参列。さすが、人気者は違う。 これでもう苦しまなくていいね。大好きなお酒、思う存分飲めるね。でもまだまだみんなと一緒にいたかったよね。 そのうちそっちに行くから(できればあなたと同じように孫の顔までは拝みたい)、そしたら一緒に飲み交わそう。

ご冥福をお祈り申し上げます。

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