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  • 執筆者の写真medicaproject 医療福祉ライター今村美

またひとり、がんが大切なひとの人生を閉じる

26日の夜、携帯に大学時代の友人で同郷のAちゃんからの着信。

大学時代本当に仲が良かった友人の一人で、地元福岡で就職して一度は疎遠になったものの、東京へ転勤になってからはまたよく遊んだ。私の結婚で山梨に引っ越してしまったのとAちゃんがまた福岡の本社へ戻ってしまったことで、この数年はまた疎遠になっていた。

そのAちゃんからの着信にようやく気が付いてボタンを押したとたん、電話は切れてしまった。折り返す音が鳴る間、何事だろうと不安がよぎる。

つながったAちゃんから「落ち着いて聞いてね」と聞かされた話は、想定を超えて、すぐに言葉が出てこない。

AちゃんはGくんと付き合って、しばらくして別れた。はずだったのだけれど、またその後付き合い始めて、現在に至る。Gくんにがんが見つかって、闘病生活の末、26日の朝にこの世を去ってしまった、という現在に。

Gくんもまた本当に仲の良かった友人だ。そもそもAちゃんとGくんの出会いのきっかけをつくったのも私だったと思う。いまとなっては共通の友人が多過ぎて、記憶もあやふやだけれども。

舞台好きのGくんとは舞台仲間たちと一緒に本当にいろんなものを観た。これまでの人生で観た舞台ベスト5を挙げろと言われたら、そのいずれにもGくんがいる。阿佐ヶ谷スパイダース、ナイロン100℃、大人計画、NODA・MAP、小林賢太郎。

病気のことはおろか、子育てに仕事に自分のことでいっぱいいっぱいだったこの8年、GくんとAちゃんがどんな時間を過ごしていたのか、また付き合い始めていたことも、なんにもしらなかった。なーんにも。

8年も…と思っていたら、息子を妊娠中、妊娠糖尿病でひっかっかって入院していた時、ちょうどGくんのお誕生日で、お誕生日メールを送ったのが最後だったことを思い出した。入院は時間を持て余す。あまりにも暇だから菊地(成孔)さんの『M/D』を読破しようとしていることを伝えると、「いま東大の(菊池さんの)授業に潜り込んでるよ」と返ってきて、相変わらずなんだなぁとちょっと安心したんだっけな。 東京にいた頃、お誕生日6日違いのGくんと私とハロウィン生まれのMちゃんの誕生日は、お誕生日を祝う会(?)のメンバーたちと毎年合同でお祝いが恒例だった。Gくんの別称はMr.B.D。ご飯を食べた後はカラオケコースと決まっていて、普段は静かに笑みを浮かべて女子の炸裂トークもやんわりかわし、ラップとは縁遠そうな印象のGくんが歌う神輿ロッカーズにみんなでソレソレ。これもまた恒例。この写真がお通夜でも使われていて、哀しいのに、思わず笑ってしまった。 あの世に旅立ってしまう一週間前に、大好きな大森靖子さんのライブに医療職の方の付き添いで、ご両親とAちゃんと4人で行ったGくん。大森さんは客席に降りてきて、Gくんのすぐ隣でGくんのリクエストに応えて、Gくんのために歌ってくれた。その映像が流れるすぐ前のテーブルには、次に行く予定だったライブのチケットが4枚並んでいた。

最期の最後までGくんはGくんらしい人生を送っていたのだなぁ。

そして、そのGくんのそばにはAちゃんがいてくれていた。

棺の中で眠る顔を見た途端、涙がぶおぉっと出てきて、こんなふうに涙が出てくることがあるのかとびっくりした。医療福祉ライターとして、死に近いところで活動してきたし、たくさんの人を見送ってきたけれど、こんなのは初めてだ。

いくらなんでも39歳ははやすぎる。

いまもふと気が緩むと勝手に涙が落っこちてきそうになって困る。

大森さんからのメッセージには「ずっと愛してます」とあった。

たぶん、一緒にお通夜に行った友人たちもみんな思ってる。

「ずっと愛してるよ、Gくん」。

でも、あの世での再会は、まだまだ先だ。

あなたの人生を閉じたがんという手強いヤツに、医療福祉ライターとして、私はまだまだ挑み続けなくっちゃならない。

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