見なかったふりをやめる日–−『どうすればよかったか?』を観て
- medicaproject 医療福祉ライター今村美
- 4月12日
- 読了時間: 2分

ずっと気になっていた話題の映画『どうすればよかったか?』を、母と一緒にようやく観に行けた。
登場人物は、統合失調症を発症した姉と両親、叔母、そして監督である弟。
カメラは淡々と日常を映していくけれど、そこに「こうすればよかった」なんて、簡単な言葉は見つからない。
病気に限らず、家族を取り巻く問題に対して、私たちはときに――蓋をする。見ないふりをする。距離を取る。
でも、それで本当によかったのか?
2年半前、子どもたちの育ちの拠点を実家に移したことがきっかけで、知的障害のある伯母との共同生活が再スタート。
1階に伯母、2階に両親と私たち親子、外の渡り廊下を渡った先に妹夫婦。ちょっと変わった8人家族。
実家に戻ってから、私は週に2回、伯母のゴミ周りをチェックするようになった。
その中でも冷蔵庫は要チェックポイント。
中2〜3日しか経っていないのに、毎回必ず見つかるカビ…しかも色とりどり。黄色、オレンジ、ピンク、緑、青――まるでカビのパレット。
最初は驚いた。「ここはカビの培養施設か?!」と。でも、当の本人はお腹ひとつ壊さない。ある意味、超頑丈で超健康。
とはいえ、カビはカビ。冷蔵庫で育てるものではない。週2回のチェックで冷蔵庫の彩りは消えた…かに思えた。
でも、まだ出る。なぜだ??
ある日、なんとなく開けた調理器具の引き出しの中に――ありましたよ…カビの生えた豚汁が。
ああ、ここで育ててから冷蔵庫に移していたのか…
謎は解けました(笑)。
けれど、笑い話では済まされない。
結婚、仕事、老後、祖母の死、そしていつか父母が先に他界したら…伯母にまつわる「どうすればよかったか?」は、いまも「どうすればよいのか?」として目の前にある。
映画『どうすればよかったか?』は、そんな問いを、なにもジャッジせず、静かに投げかけてくる。
観たあと、自分自身の「見なかったふり」に気づく人も多いはず。
Comments